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2017年9月15日 (金)

東京・埼玉へ④

さぁ~て、外に一時避難?してと…。
まずは書斎側からスナップ
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美しいですよね
軒先が折れ曲がりつつ、スーッと奥にのびていくさま。
雁行プランと言って
雁が編隊をつくって飛ぶところからきているんですが、皆さん御存じの桂離宮が代表的なもとのとしてよく取り上げられますね。
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このように奥へと連なりながら平面をずらすことで、南面するところが多くなるでしょ。
そうすると、おのずと日当たり、眺望、通風(通風はもちろん北側にも開口が必要ですが)で有効ですよね
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生活の知恵ですね(言わずもがな、広いお庭をお持ちの方でないと不可能ですが…)。

はい、今回の見学会では宮脇檀建築研究室の元スタッフ、建築家:椎名英三さんのミニレクチャーも目玉の一つ。
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本当は1回だけの予定だったみたいですが、見学者の予想以上の多さで2回催されることとなりました。
僕は一回目はスルーして、その間に人が少なくなった部屋を見学、2回目のレクチャーを聴きました。

さすがは宮脇さんのそばにおられた方、話がおもしろくてあっという間でした。
以下箇条書きにすると…

・今は周りの景観がだいぶ変わってしまってなかなか想像しにくいが、この住宅は周囲を濠に囲まれたうっそうとした鎮守の森のようなところに建っていた。
この敷地の綿密なサーベイの上で、このようなかたちになっている。
・この住宅は1983年に竣工しているが、宮脇さんらしさが見られる木造+RCの混構造であり、これ以後、宮脇さんは都市計画や住宅地の計画の方に目を向け、住宅をつくることから離れていった。
よって、中山邸が宮脇さんの作品と言える最後のもので、これ以後はめぼしいものがない。
・宮脇さんが混構造を見出したのは、多摩川沿いに今も残る1971年竣工のブルーボックスハウスがきっかけ。
ここのクライアントは、1964年の東京オリンピックの一連のポスターで有名な写真家:早崎治さん。
その打ち合わせの席で、早崎さんが宮脇さんに「もし、ここに柱を立ててつくったら、君も俺も笑いものになっちゃうぜ」と言ったことで、宮脇さんの選択肢が絞られた。
それであの大斜面にRCのボックスを半分埋め込みつつ、半分はキャンチではね出して浮かす断面となった。
初めはすべてRCでつくることになっていたが、少しでも構造的負担を軽くしようと、ボックス内部は屋根も含めて木造に変更になった。
だから内部は、コンクリートブロックを使用している風呂場以外、すべて木造となっている。
このような流れで、期せずして混構造は宮脇さんに見出された。
その後、宮脇さんは混構造のコンセプトを同じく1971年竣工の松川ボックスで整理して、1979年竣工の有賀邸へと発展させていくこととなる。
・有賀邸は皆さんご存知ですか?
宮脇さんの言い方だと、T字型のRCのボックスは槙さん(槙文彦)で、そこから軒先が斜めに出ているのが村野さん(村野藤吾)なんだと。
これを合わせてやった人はまだ誰もいないんだと言っていた。
・ここに来て発見したんだけど、中山邸は混構造の見せ方として中途半端になっているところが一部見受けられる。
例えば、居間のプラスターで塗られた壁の部分。
確かにプラスターの白と木の色は相性がいいのだが、RCは面として木は線材として見せるという混構造としてはアウト。
隣に木造の和室があるのだから、壁の上部をガラスで透かしてワンルームで見せるなどいろいろ方法はあったはずだが…。
このあたりに宮脇さんが人として非常にやさしかったというのもあるが、建築としては甘さが見られる。
もし僕がまだ宮脇さんの元に居たら、「宮脇さん、これ違うよ!」と絶対言うでしょうね。

レクチャーが終わると、気持ちですが少し人が減ったような気が。
混み過ぎて座れなかった居間のソファにどっかと腰かけ、ふぅ~っと一息
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斜めに抜けた視線の先に、南庭の緑と明るい陽射しが。
暗い方に身を置き明るい方を眺める状態は落ち着きますよね

左に視線を移すと奥に暖炉、一体となったトラバーチンのベンチ、その向こう側には中庭。
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フローリングはナラの乱尺張りです。
日焼けと染みで結構傷んでいますね。
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たまに職人さんのなかにも居られるのですが、この乱尺張りはりゃんこ張りに劣るものだと勘違いされている人がいるんですよ(現場で話をしてるとすぐ分かるんですよ、プロのくせにおぬし知らね~なってね)。

乱尺張りの方がつなぎ目の位置や色柄の取り合わせなど、考えながら仮並べして張らなければならないので手間がかかりますし、自然なランダムさを出すためには職人さんのセンスが問われるんです。
張り上がりの雰囲気も自然な無垢板の感じが出て、整然としたりゃんこ張りにくらべてやわらかい印象の仕上がりに(もちろん、りゃんこの方が私は好みって方も多いですけど)。

それから上の写真↑でもう一つ言うと、足元に通気のための窓が見えますよね。
中山邸ではピクチャーウインドゥに通気をプラスする考え方の建具が要所要所に見られますが、実際に使ってみると誠に使いづらいものもあってですねぇ。
椎名さんも足元の通気窓を開けながら、「これは使いづらいよね」と言われていた

まずしゃがみこんで、手前側に突き出してくる網戸を腕で押さえながら、奥のガラス戸を外に突き出すという開け方。
おまけにガラス戸は、20センチぐらいの長さのキャビンフックで、つっかい棒のようなかたちで留めねばならぬ。
ホイトコ使って処理するわけにはいかなかったのかな?

もし誰か他の人が同じような処理をしていたら、宮脇さんは雑誌のコラムでユーモアたっぷりに揶揄したでしょうね~。
「ちょいと○○君、この複雑怪奇な建具の開閉方法、吉村さんのワンフィンガータッチの考え方を少しみならったらいかが…」ってな具合に

居間の勾配天井頂部の空調のリターングリル及びステンレスのタイバーを米松で覆って見せる納まり。
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和室縁側から居間への回遊動線。

ステップを浮かして見せるところもぬかりなしって感じですね。Ii
人が多かったので余計に回遊性のありがたみが分かりましたね。
吉村順三設計事務所では丸三つと言って、丸が三つ以上書ける平面を模索したのだと奥村まことさんがブログで書かれていました。

居間北側の通路を通り食堂へ。
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キッチンの突き当りの窓まで見通しが利くようになっています。
ちなみに上部に見えるのは空調の吹き出し口。

はい、こちらが2間×1.5間の食堂。
居間の天井が目地合せでこちらまで延長。
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天井高が約3m~2.1mと抑揚がつけられています。
中庭に向かって大きく開いているのでかなり明るい。
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照明器具のペンダントは竣工当時と変わっていますね。

変わっていると言えば、食堂にキッチンのRCボックスが入り込んで見えるように、図面から変更になっていました(2つ上の写真の左上のところ)。
キッチン周りの寸法や裏動線の廊下の収納部など、現場で変更をかけている箇所がけっこうあるみたい。
宮脇さんが現場でギリギリまでジタバタしているのが目に浮かびます。

そしてキッチン。
居間から見える突き当りの窓が正面に。

長手方向奥行きが芯々で約4.3mほど。
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奥まで行って振り返ると↓
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っで、キッチン~玄関を結ぶ裏動線。
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ここの天井高が1.9mで一番低かったかな。
図面では東西に開き戸がついていて、中庭と外部に出られるようなっていますが、実際は棚と収納に変更になっていました。

そして玄関横のお客さん用トイレ。
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宮脇さんの言葉を借りると、客用トイレは「小ぎれいにつくって、タオル、花を置く台、エルメスの石ケン」とのこと(エルメスの石ケンとつけくわえるところが宮脇さんらしいなぁ)。

最後に、この住宅の軸線ともなった今はなき長屋門跡から。
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中山邸に14時前までいたので、滞在時間約3.5h。
あぁ~、もうこんなチャンスはなかなかないぞと、ウキウキしながら見学させてもらいました。
宮脇語録の「プライバシーを持つ出窓、朝日の当たるダイニング、南北通風は必ず取れる、端から端を見通す、いらっしゃいませと開く玄関、天井高の対比、そして土地の秩序に従う」などなど、頭の中でゴニャゴニャつぶやきながら、あぁなるほど~、これがあの考え方かぁと、一つ一つ納得しながら楽しみながらの見学

そして思いましたね、宮脇檀という建築家は本当に建築が住宅が好きだったんだなぁと。
こうしたらどうだろう?ああした方がもっと良くなるよと、たえず挑戦し現場でモノができるそのギリギリの瞬間まで試行錯誤を繰り返していたんだと。

最後に住宅地と駐車場に変化した周辺をぐるりと回りながら、往時の中山邸に思いをはせ後ろ髪惹かれる思いで帰途に。

帰りはバスで川口駅まで行き、そこから京浜東北線で浜松町まで。
飛行機の時間まで少し時間があったので、東京タワーの足元まで歩く
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増上寺と東京タワーをスナップ

先日、電気系統のトラブルで止まっちゃってニュースになったモノレールで羽田まで行き、夕食に天丼食べてお土産には定番中の定番、東京バナナ買ってと

飛行機はもちろん窓側の席とってあるので、羽田離陸から福岡着陸まで移動も旅の一部と、窓にへばりついて「寝るな、しゃべるな、本読むな」の宮脇ウェイ(ホントは少し本読んじゃったけど。本と言えば、宮脇さんって面白そう!と興味を持たれた方には、宮脇さんのエッセイをおススメします。僕が初めての宮脇入門で上げるならこれかな→『父たちよ家へ帰れ』)。

っと最後まで宮脇語録でしたとさ、おしまい☆

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